わいの銀行員日記③ ずさんな融資は何もアパロンだけでもなく…

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スルガ銀行ネタで大盛り上がりの金融業界。次のスルガはどこだ的な話もちょくちょく出てきております。おそらくはスルガだけの話ではなく、ずっと貸し出しが伸び悩んでいた銀行は個人向けの不動産融資(アパートローン)を重要な融資対象と見ていたわけで。不動産業者さんが持ってくる案件、なかには毒饅頭と知りながらも食べざるを得ない案件もあったのかなぁと思料します。

さて、杜撰な融資はなにもアパロンに限った話ではありません。企業向けの融資でもよくよく見ました。企業向けと言っても小規模・零細企業向けの少額融資です。金額にすると500万円~5000万円ほどでしょうか。

銀行の融資と言うと、「晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」とか、担保をガチガチに固めて損をしないようにする、なんてことがネット民的な印象でしょうが(偏見)、上述したように本業である融資が全然伸びなくて商売が成り立たない状態なので、むしろ「お金を借りでください」とお願いして回っているというのがワイの感覚。少なくとも自分の経験ではそうでした。

上司からは「エレファント!エレファント!」と発破がかけられました。これはエレファントカシマシ→かしまし→貸し増し となって、企業に追加融資をしろ、という意味です。

とはいえ、少額の融資を1件1件、精査して審査して…なんてのは効率が悪いです。そこで財務諸表のみで信用力を測定するモデルを使って、簡単に融資可能金額と金利をはじき出すスコアリングモデル融資というのがありました。(たぶん今もあると思う)今でいうビッグデータ/ディープラーニング()じゃないですが、過去の融資と実績から「こんな財務だとこんなデフォルト率で~」というのをモデル化します。

基本、無担保、無保証、融資まで3日、慣れてくれば1時間で諾否は出せます。決算書さえあれば、財務データの入力(といっても決められた項目の数字をPCに打ち込むだけ)に30分、ポチっとボタン押したら、ランクがでてくると。あとはそのランク、期間などによって金利が自動的に決まる。稟議書はその画面の印刷だけでOK。必要書類を準備してもらって、契約書締結、おしまい。火曜日に新規先から「借りたいんだけど」と電話もらって木曜日に融資の実行をしたことありますから。

融資取込詐欺はやはりありました。とにかく短時間で件数をこなす融資なので、決算書も丁寧に見ない。というかほとんど見ない。データを打ち込むのに使う資料という位置づけです。だからその信憑性なんて気にしなかった。なので、税理士とグルになって決算書や納税証明書を偽造してお金を引っ張り出そうって輩はいますよね。

さて、このスコアリング融資のミソは融資の与信判断の責任は支店が負わないという点です。財務データから算出されるランク。これは各銀行によって多少は違うんでしょうけど、たぶん大体一緒。安全性(流動性比率とか自己資本比率とか)と成長性(前期、前々期からの利益増加率など)の各項目に点数を振って、合計点でランク決めするんです。で、決算前の3月の末に色々と工作をこちらから示唆するわけです。

たとえば、現金に余裕があるなら借り入れを一括返済させちゃう。そうすると決算時の自己資本比率とか有利子負債が減って点数が上がる。逆に現金があまりないなら、一時的に2-3年でお金を借りさせる。そうすると、現金が増え、長期借入金が増える。有利子負債・自己資本比率ではマイナスなんだけど、流動性比率や長短バランスでプラス点がつくので、ランクは上がる、、、などなど。

こんな感じなんでスルガは氷山の一角でしょう。今日もどこかの銀行でエレファントと叫ばれていると思います。

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