おすすめ本「エネルギー」 オプションの売りっぱはダメよ

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少し前の記事になるのですが、個人トレーダー界隈ではちょっとした話題になったこの記事。

三菱商:約345億円の損失発生へー海外の原油デリバティブ取引で

いつの時代にもこの手の損失を隠してしまうトレーダーはおりますです。テクノロジが発展して、リスク管理もコンプライアンスも厳しくなる一方ですが、なっかなか無くならないですね。
この手のトレーダーのことを「ローグトレーダー(ごろつきトレーダー)」と呼びます。以前書いた「銀行崩壊」のニックリーソンもそう。

で、今日はまた黒木亮の「エネルギー」のご紹介。実は今回の三菱商事のトレーダーとほぼ同じようなシーンが出てきます。
(て言うても実在した事件をモデルにしているので小説に出てくると言っていいのか)

中国系航空会社のために燃油調達をする中国航油。CEOのチェン・ジウリンはヘッジしか認められない中国の規制を踏まえつつも「将来的には、投機をやりたい」と言います。原油価格の上昇は一方的と考えてコールオプションを売りまくるのですが、原油価格ってのは上昇しだすと止められないというのはよくあることで。「オプションを売りまくる、相場が逆を行く」怖さは皆さんもよくお判りでしょう…( ;∀;)

上手くいかないと損失隠しのためにその場しのぎの益出しデリバティブを契約し…。(モルヒネみたいなものです)。この小説でもロスカットの重要性をこれでもかと言うくらい分からせてくれる1冊となります。

それ以外にもマーケット好き人間にはワクワクする記述があって、リアル感があって面白いです。
主人公の一人、秋月さんはエネルギーデリバティブのヘッジファンドみたいな立ち位置。東京電力が原発の事故を隠していたことで一斉に叩かれる、という状況です。

秋月はしばらく考えを巡らせてから、黒い革張りの椅子から立ち上がった。

ガラスのドアを開け、イギリス人主任トレーダーの傍らにいく。

「ガソリンは売りだ。先物で売って、重油を買え」

「なぜ?」

イギリス人は、黒い革張りの椅子にすわったまま、秋月を見上げる。

「TEPCO(東京電力)の事故は、原発10基以上の大規模なものらしい」

秋月の言葉に、イギリス人は、ほう、という顔で片方の眉を上げる。

「かなりの数の原発が稼動停止になる。代替燃料の重油を確保するのに、東電は石油会社に圧力をかけて重油を増産させるだろう。そうすると日本国内でガソリンがだぶつく」

「なるほど……」

原油を精製する過程で、軽油や灯油をC重油生産に振り替えることは容易だが、ガソリンからC重油に転換することはほぼ不可能。したがって、C重油を増産すれば連産品のガソリンの供給が膨らみ、価格が下落する。

重油の買いを組み合わせるのは、ポジションが相場全体の動きに影響されないよう、裁定取引にするためだ。

黒木亮『エネルギー』より

原発が事故隠蔽で10基も運転停止になりそう。なので東京電力は火力発電所を使うことになります。火力発電に使うのは重油。その重油が大量に必要になってくるわけです。なので重油は値上がりしそう。一方で、原油から重油を精製すると一緒にガソリンも産まれます。このガソリンは重油に転換することが出来ないのでだぶついて値下がりするだろうってこと。なので重油をロング、ガソリンをショートにしていわゆるサヤを取るってことですね。

小説自体は文量が多いのですがトレーダーであればめっちゃ面白いので一気に読めます。秋の夜長にぜひ。

 

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